1. 山梨の現状

 山梨県の人口は約78万4千人(2025年9月1日現在)で、コロナ禍の一時的な転入超過を除き、3年振りの転出超過になるなど社会減も減少幅が広くなる中で、県内全体での少子高齢化は他の都道府県と比べ大きく進行しています。また、県内でも、人口が集中している甲府市や、子育て世代の移住に伴い人口が増えている地域、逆に過疎化が進行し、高齢化率が40%を超える地域も出るなど、地域毎に抱える課題は様々見られます。

 こうした状況下で、県内で活動している、民間主導で社会貢献活動に従事する個人及び団体(以下、「ソーシャルセクター」という)とすると、例えば、NPO法人だけも489法人(2025年8月31日現在)あり、それに法人格を持たないNPOやボランティア団体、社会貢献活動に取り組む民間企業などが挙げられますが、多くの団体が比較的小規模であり、個々の活動だけでは、各地域で生じている課題解決には十分な効果が期待できない状況です。また、個々に小さいながらも活動を続けている個人や団体がある中で、それらの連携を図る中間支援組織の存在が不明確で、十分に連携ができてこなかったことも事実です。

2. 空白地域を自認

 そこで私たちは、そうした現状と事実を真摯に受け止め、山梨県において、県内における大小様々な支援機能を担う各種ソーシャルセクター間の協力を促し、限りある人的資源を有効に活用し合い、それらソーシャルセクターの底上げを図ることにより、子どもや女性の貧困など、地域における構造的な不平等の解消を始めとした地域課題を解決するための資金循環・中間支援を行う市民財団としての「山梨コミュニティ財団」を発足させることを考えています。

 何故、いま市民財団の設立を目指すのか。長年、山梨県は市民財団の空白地域でした。市民財団ができることにより、緊急時の民間資金として、地震や大雨などの災害時に、県内各地の災害時対応の選択肢の1つとなるだけでなく、発災直後と復興時期の隙間を埋めるような支援を担うことができるようになります。また、県外への資金流出の抑止として、相続時における資産流出率が15%以上20%未満である山梨県は、「遺贈寄付」などの受け皿が無いことなどによる資金の県外流出が生じています。

 そうして長年空白地域であったものの、逆に後発で市民財団を設立するからこそ、先発の好事例を取り入れながら、県内の各地域で生じている様々な課題について継続的に議論できる場所であるとともに、民間主導で中立・公平な立場で県内の関係団体間の理念の垣根を越えたつながりを醸成する役割を発揮し、「地域のために何かしたい」という想いの個人や団体、民間企業などが寄付に託した想いを地域の課題解決につなげる仕組みを作ることができるようになります。

 また、より実効性のある市民財団の設立にあたっては、任意団体である準備会を設置し、構成するメンバーとその関係主体とのネットワークを活かし、直接的な受益者となる県内のソーシャルセクター間で市民財団設立に向けた方向性の共有を図るとともに、寄付金や出資など様々な形で、より実効性ある資金調達に取り組んでいく必要があります。

3. 持続可能なコミュニティ

 市民財団が設立されることによって、寄付を始めとした賛同の輪が広がり、広く市民が地域で起きている課題やその解決策についての理解を深める中で、各地域で生じている課題を解決するため、ソーシャルセクターと行政との間で、お互いが担うべき活動のすみ分けができ、ソーシャルセクターが市民財団による伴走支援を通して、自立して活動することができるようになるとともに、市民財団が様々な社会課題解決に取り組むステークホルダー同士をつなぐ中間支援を担い得る世界を目指します。

 そして、最終的には、それら一連の活動を通して、今山梨でソーシャルセクターに求められるニーズに応えていくとともに、県民の中でもそうしたソーシャルセクターや中間支援組織に対する理解を深め、住民の自治によって自立した持続可能なコミュニティの形成をはかっていく必要があります。

4. 設立への想い

 そのために、いま問われているのは、活動団体や連携の取り組みが社会において信頼され、それを基盤に、資金を始めとする資源が循環していくようにしていくことだと私たちは考えます。また、市民活動と経済活動は、地域社会を魅力あるものにするという点では共通の願いを持っており、例えば、コミュニティ・バンクの機能など、地域づくりという観点から幅広い連携と相互支援の可能性も模索できます。そうした環境が整えられることによって、市民から提供されたものが、問題を解決する成果となり、改めて市民に戻ってくるような、魅力ある市民社会を実現したいと願っています。

  私たちは、この財団運営を通して、市民、NPO、市民活動団体、地域団体、事業者、教育機関、行政など、多様な主体が提供し得る資金・知識・情報・人材・技術・物品を地域の中で循環させ、各主体が連携して活動していくための橋渡しを狙いとしています。多くの方々のご賛同を得て財団を設立し、山梨県に“山梨ならでは”の未来に向けた市民財団ができていくことが、私たち設立発起人一同の想いです。

一般財団法人山梨コミュニティ財団設立
発起人
有野 文明
城野 仁志
櫻林 賢治
佐々木 由紀
宇佐美 淳
野口 雅美
嶋田 尚教
若林 美緒
高村 大夢
𠮷原 あさひ